よく周りから聞く声で、「体験ダイビングやったけど怖かったからもうしたくない」というのがよくありますね。陸上の哺乳類が水中に入るわけなので、怖くて当たり前。最初から怖くなくてスムーズにダイビングができるほうが珍しいです。
ただ、折角ダイビングを体験したのに怖かったから2度とやりたくないというのは悲しいですね。実は、そういった意見が出てくる原因は、その体験ダイビングで最後まで楽しむことができなかったから。誰でも初めての体験ダイビングは怖いもの、「ドキドキ」して当然なのですが、そのあとリラックスできて楽しめたかどうか。
そのカギとなるのが、「緊張と呼吸」。
まず緊張から。水中に入る前、今まで経験したことが無いと緊張するのは当たり前。担当する側として、その緊張がどの程度かは腕や手に入っている力を感じればわかります。グーッと握りしめている間は緊張が解けていないので、じっくり時間をかけてその力が抜けるまで待つことになります。
水中にいるときは全身がふにゃふにゃになるぐらい力が抜けているのが理想的。お客様の力が抜ければこっちのものです。あとは、時間の許す限り水中世界を楽しんでもらうことになります。
次に呼吸。前述の緊張が大きく影響するのが呼吸です。皆さんもちょっとやってみてください。グッと胸や腕に力を入れて息を吐こうとするとしっかり吐ききれないはずです。この状態でダイビングを始めると、徐々に息苦しくなってしまいます。
そうなんです、ダイビング中に重要なのは息をしっかり吐ききること。これができるためには力が抜けていないとできないんです。
怖くて潜れなかったというのは、実は怖くて力が入りすぎて息が吐ききれず苦しくなって潜れなかったというのが本当のところ。体験ダイビングをするときは、この力の抜け加減、呼吸のしやすさが最も重要になるわけです。
ちなみに私が体験ダイビングや講習中に禁句にしている言葉があります。それは、
- 「大丈夫!」
- 「落ち着いて!」
「大丈夫!」は大丈夫じゃないお客様が緊張しているわけで、大丈夫と言われてもその緊張が解けるわけではありません。原因を説明して、その原因を取り除くことが重要です。
「落ち着いて!」は、これも「大丈夫」と同じで落ち着けないからどうすればいいかが重要で、ただ単に落ち着いてと言われても状況が好転することはあまり望めません。お客様が落ち着いてくれるようなインストラクター側の仕草・対応が重要になります。
お客様の緊張を解くテクニックをマニュアルにすることは難しく、マニュアル化が難しいということはそのテクニックを教えていくことも難しいのですが、インストラクターとして経験を積んでコツをつかんでいくことが一番の近道でしょう。